智方さん
 智方神社は道祖神的な性格が強い。長沢智方神社の、祭神のうちに、予母都道守神菊理比盗_
(よもつみちもりのかみきくりひめのかみ)がある。予母都道守の神は、その名が示すように道を守る神である。即ち旅人の安全を守る神である。
菊理比盗_は、有名な越前・加賀・美濃の国境にそびえる、白山神社の主祭神で、これも国境を守る神である。黄瀬川は昔伊豆と駿河の国境であり、こうした国境を守る神々が祀られたことは、もっともな事である。新宿の地方神社・竹原の越方神社も同じ祭神である。これはその後、国境が移動して、駿豆の境は、黄瀬川から境川に移っために境川が伊豆・駿河の国境になった。
このため新宿にも竹原にも、道祖神的性格の強い、地方(ちかた)神社が祀られるようになったのである。
 道祖神は、サヘノカミ、又は道陸神(どうろくじん)ともよばれ、防障(ぼうしょう)・防塞(ぼうさい)の神で、外からおそってくる、疫病や、悪霊を、村境・国境・橋のたもとなどで防止してくれる。また、生者と死者、人間界と幽冥界(ゆうめいかい)の境をまもる神様でもある。
また行路の神・旅の神という道祖の神も習合されるようになった。更に仏教渡来後は、冥界思想はその影響をうけることが多くなり、サへの河原・ショウヅ河などの仏教的な解説が行なわれ、六道(りくどう)の辻の信仰とか、大観音・六地蔵なども盛んになり、村の辻・橋畔(きょうはん)などは、人馬の往来もしげく、子供の遊び場所ともなり、村人の運命を知り、縁を結び、子供とも特に親しい神となっている。そして道祖神即ちサへの神は、性の神ともなり盛んに祀られるようになった。
智方神社は祭神から考えても、神域が駿豆国境の黄瀬川河畔にあることと相まって、道祖神的信仰から、
「性の神的」信仰につながり、沼津方面の水商売の人達が多数参拝するようになり、多額の賽銭を奉納する人もあるようである。

「清水町のむかしばなし」(清水町教育委員会発行)から転載する。